概要:
大型3Dプリンタを活用することで、製造業では実寸大の試作品、治具・固定具、型、最終製品部品などを造形できます。また、大型部品の一体造形だけでなく、1回の造形で複数の部品を製作することで、生産性の向上や部品単価の低減も期待できます。
本記事では、FDM、SLA、SAF™、PolyJet™の各方式について、造形サイズ、対応材料、生産性などの違いを比較します。大型の一体部品を造形する場合から、多数の部品を効率的に製作する場合まで、用途、材料、必要な造形サイズ、生産目標に応じた選定方法をご紹介します。
大型3Dプリンタで造形する様子は、建物が一層ずつ立ち上がっていく光景にも似ています。こうした産業用3Dプリンタは、分割や接合を行わずに、実寸大の部品や試作品を一体で造形できます。大型部品を必要とする製造現場にとって、大きなメリットとなります。
大型3Dプリンタの用途は、大型の一体部品だけではありません。広い造形領域に複数の小型部品を配置し、1回の造形でまとめて製作することも可能です。これにより、生産性を高め、部品単価を抑え、複数部品を必要とする製造工程のリードタイムを短縮できます。
一方で、「大型3Dプリンタは造形に時間がかかる」「導入コストが高い」「大型部品にしか使用できない」といったイメージを持たれることもあります。しかし、実際には、大型部品の一体造形から複数部品の同時造形まで、幅広い用途に対応できます。運用方法や対象部品によっては、小型機を複数台使用する場合よりも高いコスト効率が得られる可能性もあります。
本記事では、次のような疑問にお答えします。
大型3Dプリンタとは、大型部品の造形や、複数部品の同時造形に対応できる広い造形領域を備えた3Dプリンタです。一般的には、300 × 300 × 300 mm以上の造形サイズを備えたシステムが大型3Dプリンタとされることがあります。産業用3Dプリンタの中には、1,000 mmを超える方向寸法を持つシステムもあります。
複数部品のネスティングとは、1つの造形領域内に複数の部品を効率よく配置する手法です。造形領域を有効に活用することで、材料の無駄を抑え、生産性を高めることができます。このため、大型3Dプリンタは、大型のモデルや部品を製作する企業だけを対象とした設備ではありません。
大型3Dプリンタは、すべてが同じ方式で造形するわけではありません。造形方式によって、対応できる部品サイズ、造形速度、材料、表面品質、生産性、費用対効果が異なります。
大型の一体部品を造形したい場合と、多数の部品を効率よく生産したい場合では、適した方式が異なります。用途、求める品質、材料、生産数量を踏まえて選定することが重要です。
以下では、大型部品の造形や複数部品の一括造形に対応する、ストラタシスの主な造形方式と3Dプリンタをご紹介します。
ストラタシスの主な大型 FDM 3Dプリンタ
ストラタシスの主な SLA 大型3Dプリンタ:
Neo800S: 800 × 800 × 600 mm。大型の試作品やマスターパターンを高い表面品質で造形できます。
ストラタシスの SAFプリンタ
ストラタシスの主な PolyJet 大型3Dプリンタ
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造形方式 |
主な用途 |
造形サイズ |
主な材料 |
複数部品の造形 |
大型造形対応 |
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(溶融積層法) |
低コスト、大型機能部品、金型 |
最大900mm |
熱可塑性樹脂、複合材料 |
中~大型部品の並列配置 |
単一部品に最適 |
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(ステレオリソグラフィ) |
滑らかで高精細な試作品 | 最大800mm |
フォトポリマー樹脂 |
単一樹脂槽内での複数部品同時造形 |
大型で滑らかな表面のプロトタイプに最適 |
SAF™(選択的吸収溶融) |
耐久性に優れた量産印刷 |
最大400mm |
工業用グレードの熱可塑性樹脂 |
最大スループットのための垂直積層部品 |
大型部品には不向き、中小サイズの大量生産部品に適している |
PolyJet™ |
操作が簡単でシンプル、メンテナンスも少ない。比類のないマルチマテリアルとカラーパーツ |
最大500mm |
硬質・軟質樹脂、フルカラー樹脂、医療用材料 |
1回のビルドで異なる色/材料の複数の詳細モデルを造形 |
大型部品には制限あり、高精細マルチマテリアルビルドに優れる |
大型3Dプリンタの導入は、設備、材料、運用方法などを含めて検討する必要があります。ここでは、導入時によく挙げられる疑問について解説します。
大型産業用3Dプリンタは、用途や機種によって初期導入費用が高額になる場合があります。一方、次のような効果によって、製造工程全体のコスト削減につながる可能性があります。
導入費用だけでなく、材料費、工数、外注費、在庫、設備稼働率などを含めた総所有コストで評価することが重要です。
造形時間は、部品のサイズ、形状、積層ピッチ、材料、造形方式によって異なります。ただし、大型の一体部品を分割せずに造形することで、接着や組み立てなどの後工程を削減できます。また、広い造形領域に複数部品を配置することで、1回の造形当たりの生産性を高められます。造形時間だけでなく、設計から完成部品を得るまでの工程全体で比較することが重要です。
産業用3Dプリンタには、定期的な点検や保守が必要です。ただし、必要なメンテナンス内容は、造形方式、機種、材料、使用頻度によって異なります。装置の自動化機能や遠隔監視機能、メーカーや販売代理店のサポート体制なども含めて比較し、自社の運用環境に適したシステムを選ぶことが重要です。
大型3Dプリンタは、大型部品専用ではありません。広い造形領域に複数の小型部品を配置することで、1回の造形でまとめて製作できます。これにより、生産性の向上、部品単価の低減、納期短縮につなげることが可能です。
大型3Dプリンタが適しているかどうかは、製作する部品、必要数量、材料、納期、品質要件によって異なります。
少量生産や試作では、金型を使用せずに設計データから直接部品を製作できるため、コストとリードタイムを抑えられる場合があります。複雑な形状を製作しやすく、設計変更にも迅速に対応できるため、開発サイクルの短縮にもつながります。
導入を検討する際は、装置価格だけで判断せず、外注費、金型費、材料費、作業工数、在庫、後工程などを含めて、現在の製造方法と比較することが重要です。
自動車・モータースポーツ
大型3Dプリンタを選定する際は、次の点を確認します。
主な用途は何か
試作、治具・固定具、型、少量生産、最終製品部品の量産など、目的を明確にします。
どのような材料特性が必要か
強度、耐熱性、耐薬品性、柔軟性、色、透明性、生体適合性など、必要な特性を整理します。
必要な造形サイズはどの程度か
最大部品寸法だけでなく、1回の造形で製作する部品数も確認します。
どの程度の品質が必要か
寸法精度、表面品質、再現性、機械的特性など、部品に求める要件を設定します。
必要な生産数量はどの程度か
単品、少量、多品種少量、継続的な量産など、生産形態によって適した方式が異なります。
総所有コストはいくらか
装置価格だけでなく、材料費、保守費、作業工数、後処理、設置環境なども含めて検討します。
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プリンタ |
技術 |
造形サイズ(mm) |
主な用途 |
主な利点 |
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FDM |
1,000 x 610 x 610 mm |
大型産業用プロトタイプおよび治工具 |
大型造形サイズ、ユーザーフレンドリーなインターフェース、大型部品にコスト効率が良い |
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FDM |
914 x 610 x 914 mm |
航空宇宙、自動車、産業部品 |
高強度熱可塑性プラスチック、航空宇宙用認定材料、一貫した精度 |
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FDM |
600 x 600 x 800 mm |
高スループット、産業用グレードの生産 |
高生産性、多色対応(4エクストルーダー)、最小限の操作労力 |
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SLA |
800 x 800 x 600 mm |
高精細大型試作モデル |
優れた表面仕上げ、微細な特徴、大規模なマスターパターン |
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SLA |
450 x 450 x 400 mm |
高精細大型プロトタイプ |
卓越した表面仕上げ、微細なディテール、コンパクトな設置面積 |
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FDM |
406 x 355 x 406 mm |
25種類以上の材料オプションによる多様な用途 |
産業用から高性能材料まで対応、要求の厳しい用途に最適 |
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SAF |
315 x 208 x 293 mm |
大量生産の最終用途部品 |
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PolyJet |
490 x 390 x 200 mm |
マルチマテリアル、フルカラーのプロトタイプ。クリーンな環境への影響と持続可能性 |
リアルなモデル、単一プリントでの複数材料対応、医療・民生用途 |
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PolyJet |
490 x 390 x 200 mm |
高度なプロトタイピング材料 |
エンジニアリングプロトタイプ、製品設計、自動車 |
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PolyJet |
最大2m2の布地に460 x 360 x 50 mm |
ダイレクト・トゥ・テキスタイル 3D プリンティング |
ファッション、自動車内装、工業用テキスタイル |
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PolyJet |
490 x 390 x 200 mm |
生体適合性材料 |
医療トレーニング、手術計画、デバイス試験 |
視覚的な比較をご希望ですか?ストラタシスのプリンタを造形容積で比較したこの図をご覧ください。
大型3Dプリンタの選定では、単に「大きな部品を造形できるか」だけでなく、用途、材料、品質、生産数量、運用コストを総合的に評価することが重要です。
ストラタシスは、大型一体部品の造形、高精細な試作品、多数の部品の一括造形、フルカラー・マルチマテリアルモデルなど、さまざまな用途に対応する産業用3Dプリンタを提供しています。