3Dプリンタコラム

3Dプリンタで変わる、製品開発とデザイン 第6回

FDMの進化③ クラウド製造の台頭とサプライチェーンの変革

2015年11月16日  執筆者:原田 逸郎

最終品を作れるFDMテクノロジーはサプライチェーンを変える

これまで2回にわたりFDMテクノロジーの進化をご紹介してきましたが、デジタルデータからダイレクトに最終品が作れるようになることで、今後のものづくりはどのように変化していくのでしょうか


その影響は甚大で、あらゆる分野に影響をもたらすと言われています。例えば、その最大の変革がサプライチェーンの変革と言えるでしょう。デジタルデータからダイレクトに物体を製造することができれば、極端な表現ですが、製造する場所は問いません。最終品を作ることができるFDM 3Dプリンタを配備すれば、デジタルデータをクラウド上で共有し、必要に応じて生産することができるのです。一概にすべての製品に適用できるわけではありませんが、3Dプリンタに変更することができる製品・パーツであれば、ビジネスに劇的な変化を生み出します。


例えば、これまでAという国で生産し、Bという国に輸送・販売していた製品を、3Dプリンタで作ることができれば、これまで発生していた物流コスト・時間が圧倒的に削減されます。クラウド上で設計データを共有し、B国に配備した3Dプリンタで直接製造を行うことで、海上もしくは航空便による物流コスト、さらには通関コストをゼロにします。さらに、国際取引においては常に悩まされるリスク、国によって異なる通関上の問題や、天災地変による予測不能な事態といった、目に見えないリスクからも解放されるのです。いわば3Dプリンタによる最終品の製造に切り替えることで、コスト削減とリスク回避を実現し、ビジネスの高速化という圧倒的な競争力を身に付けることにつながるのです。


こうした3Dプリンタの特性を受けて、既に動き出している企業も存在します。それでは次に、サプライチェーンの変革を見越したUPSの事例をご紹介しましょう。

value28

高性能なFDM 3Dプリンタでクラウド製造に乗り出すUPS

UPSはアメリカの貨物運送会社であるユナイテッド・パーセル・サービスの略称です。そのサービスは世界200カ国以上の国と地域に展開する国際物流会社で、なんと1日に取り扱う荷物の量は1400万個以上とも言われています。その国際物流を代表するUPSが新たに3Dプリントサービスを開始しているのです。


Cloud DDM(ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング)と言われるこのサービスは、ストラタシスのFDMテクノロジーの高性能3Dプリンタを配備し、クラウドにアップロードされた3Dデータを即日プリント、即日配送するといったサービスです。ユーザーはたった3ステップで最終品の3Dプリントパーツを希望の場所に即日届けることができるといったもので、既に全米で展開が始まっています。


それはまず、STLファイルをCloud DDMにアップロード、第二に数量、素材、色、生産の優先順位を選定。第三に出荷先、支払い情報を入力するだけというシンプルな仕組み。製造はUPS内に設置されたUPS Worldwide Hubという3Dプリントセンターで行われ、高精度な後加工もほどこされ納品されるのです。


このクラウドを使った製造システムCloud DDMは、UPSの物流・パッケージングシステムと連動しており、なんとその日の18時までに発注すれば次の日には納品されるという驚くべき速さを実現しています。これこそまさにストラタシスのFDM 3Dプリンタの真価であり、デジタルデータからダイレクトに最終品を製造するDDM(ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング)の真髄ともいえる使用方法です。これまでのように何週間もかけてパーツを製造し輸送するという「作って送る」という形態から「データを送って現地で作る」という形態にサプライチェーンを変革していると言えるでしょう。

value28 value28

まとめ

さまざまな分野で企業競争力を強化する

3Dプリンタとクラウドを使った製造サービスに進出しているのはUPSだけではありません。同じ国際物流会社であるフェデックスも3Dプリントサービスを開始していますし、海外ではシンガポール郵便局のシンガポールポスト、イギリス郵便局のロイヤルメールも高性能な3Dプリンタを配備した3Dプリントサービスに乗り出しています。こうした郵便・物流関連の事業が3Dプリントサービスに乗り出す背景には、最終品を作ることが出来るまで進化したFDMテクノロジーの存在が大きいと言えるでしょう。


また、3Dプリンタで最終品をつくる範囲が拡大すればするほど、「作ってから送る」範囲がより縮小し、「データを送って作る」形態にどんどんシフトしていくことが予測されます。 つまりこれまで郵便や小包で送っていた物が、データを共有して作る時代に変化していく事を示しており、その時代の流れに対応しなければ、郵便・物流事業は生き残っていけなくなるのです。


また、このようなクラウド製造の浸透とサプライチェーンの変革は、巨大な物流サービスだけにいえるものではありません。既存の製造ラインを持つメーカーや、これから新たな製品開発を始めるベンチャー企業にとっても、クラウドDDM(ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング)は企業競争力を高める有効な手段です。クラウドで設計データを共有することで、複数のデザイナーやエンジニアと迅速に製品開発を進化させることができますし、他国での展開もスピーディに行うことができるのです。


テクノロジーが進化するとともに、それに応じてビジネスの展開方法も時代に合わせたやり方に変化させていくそんな動きが3Dプリンタの進化で登場しつつあります。次回は、新たに登場するクラウドDDMの動きについてご紹介します。

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎
明治大学公共政策大学院卒。広告代理店にて大手タイヤメーカー、自動車メーカーなどの総合広告、ブランド・コミュニケーション、マーケティングを行う。その後、専門商社にて測定器関連事業の製品企画・開発を経て、2013年に株式会社アイ・メーカーを設立。これからの時代のものづくりに影響を与える3Dプリントとデジタル技術の情報サイト「i-MAKER.news」を運営。

3Dプリンタが分かる入門ガイドブックを無料ダウンロード

スゴさが分かる!3Dプリンタ入門

3Dプリンタについてさらに詳しく学べる
ホワイトペーパーをご用意いたしました。

Stratasys Ltd. © 2015. All rights reserved. See stratasys.com/legal for trademark information.