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3Dプリンタで変わる、製品開発とデザイン 第5回

FDMテクノロジーの進化② コンシューマプロダクト編 ~ユーザーの課題を解決し、マスカスタマイゼーションをもたらす~

2015年11月10日  執筆者:原田 逸郎

コンシューマレベルでの最終品の製造とカスタマイズの時代

前回、独自の進化を遂げるFDMテクノロジーについて、工業用パーツの事例を中心にご紹介しましたが、その範囲は工業用に留まらず、一般消費者が直接手にとって使用する製品、コンシューマレベルのプロダクトにも生かされ始めています。工業用パーツでのFDMテクノロジーの導入は、主に3つのメリット(性能向上、コスト削減、リードタイムの短縮)をもたらしますが、コンシューマレベルの利用ではさらにそれに加えて、プロダクトを時代に対応させるといった、新たな力をものづくりの現場にもたらすのです。それがマスカスタマイゼーションと言われる新たな概念です。


今回は、デジタルデータから最終品の生産を行うだけではなく、消費者一人一人の細かいニーズに対応することができるカスタマイズ性に焦点をあて、具体的な実例を元にFDMテクノロジーの真価、マスカスタマイゼーションの機能をご紹介したいと思います。モノ余りといわれる時代に入って久しい現代では、単なる画一的な製品を提供するのではなく、個人個人の潜在的なニーズや課題を汲み取り、そこに最適な機能を発揮するオンリーワンのものづくりが必要となるのです。そうした時代性という観点から見ると、デジタルデータからオンデマンドで製造することができる3Dプリンタはまさに最適な製造マシンと言えます。

モノ余りの時代に必須の製法。マスカスタマイゼーション

まずはじめに、マスカスタマイゼーションとはどのような意味を含んでいるのでしょうか。読んで字のごとく、マス(大量生産)にカスタマイズ性を取り入れようという生産体制になります。多品種少量生産ならぬ多品種多量生産とも言えるでしょう。例えば、これまでのものづくりにおいては、画一的な製品を大量に生産することで、1個あたりの製品の単価を下げ、利益を上げるという方法がとられてきました。しかし、現代のようにありとあらゆる製品が登場し、同じような製品が溢れかえる時代では、人の価値観や要望も多様化しており、単なる画一的な製品を大量に生産したところで、必ずしも売れる時代ではないのです。そのような時代においては、生産量重視のものづくりよりも、一人一人の細かい要望や課題に応じたものづくりのあり方が必要になります。それがマスカスタマイゼーションという新たな生産体制なのです。


そしてそのマスカスタマイゼーションを可能にするのが、3Dプリンタであり、実際にユーザーが使用できるクオリティを作り出すことができるストラタシスのFDMテクノロジーが真価を発揮します。単純に大量生産方式との比較はできませんが、「ユーザーの要望=カスタマイズ」という観点に絞ってみれば、3Dプリンタは金型とは比較にならない経済性と柔軟性を発揮します。例えば、射出成形の金型を作るためには膨大なコストがかかり、尚且つ一度金型が出来てしまえば、その金型通りの物体しか作ることができません。すこし形状を変えた物体を作ろうとすれば、もう1台膨大なコストをかけて別の金型を用意するしかないのです。しかし、デジタルデータからダイレクトに成形することができるFDMテクノロジーでは、製品のベースとなるデジタルデータを変更するだけで、コストをかけることなく1個単位で生産することが可能となります。これこそが3Dプリンタの最大の特性の一つであり、最終品レベルを生産できるストラタシスのFDMテクノロジーの真髄でもあるのです。


それでは次にもう少し具体的な事例を上げて最終品の使用状況をご紹介しましょう。

ユーザーの耳にカスタムフィットするイヤホンをFDMで製造

カスタマイズ性が最も要求されるプロダクトとして、人間の体にフィットさせて使用する製品が代表的です。例えばマスカスタマイゼーションの典型例として挙げられるスーツのオーダーメードなどのように、人間の体は様々な部分で千差万別であり、人によって一つとして同じ形状はありません。こうしたことから、人間の体に身に付ける義肢、補聴器、インソールなどの分野で3Dプリンタは利用が盛んでした。こうしたことの派生から、いくつかのプロダクトが個人のフィジカルデータに最適な形状にカスタマイズされ生産が行われています。


そのマスカスタマイゼーションの代表とも言える存在が、3Dプリントイヤホンを手がけるNormalです。Normalは、各個人の耳の形状に合わせて完全にカスタムフィットさせることができるイヤホンを製造しています。通常イヤホンは一般的に画一的な形状が決められており、必ずしもすべての人の耳にジャストフィットするものではありませんでした。おそらく音楽を日常的に聞く人であれば、イヤホンが耳にあわずに何度も外れるという「製品の不快感」を感じたこともあるでしょう。Normalはこうした声なき「製品の不快感」をストラタシスのFDMテクノロジーによって完全に克服しているのです。


Normalの製品では、専用のアプリケーションとストラタシスのFDMテクノロジー、Fortus 250mcプリンタを使用することで一人一人のカスタムフィットを可能にしているのです。ユーザーは専用アプリケーションで自分の耳の写真を撮影するだけ。それによってNormalのエンジニアが3Dデータ化し高性能のFDM 3Dプリンタで製造、注文から平均48時間でユーザーの元に届けるという仕組みを可能にしています。これによりNormalのユーザーは、画一的なイヤホンよりも外れにくく、快適に音楽を聞くという価値を手に入れることができるのです。

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まとめ

デザインと、ものづくりの真の目的をパワーアップ

ものづくりとデザインの最大の目的は、対象となるユーザーの課題を解決すると同時に、新たな価値を与えることに尽きます。それがデザインの本当の役割であり、ものづくりの目指す、あるべき形なのです。こうした観点から見ると、今回ご紹介した3DプリントイヤホンのNormalは、FDMテクノロジーの真価を発揮する代表例と言えるでしょう。一つ一つのプロダクトを、ユーザー一人一人に最適化されたかたちで提供する。それこそが、ユーザーの持つ隠れた課題、外れるかもしれないといった不安感を取り除き、快適に音楽を聞くといった新たな価値を与えることにつながっています。


このように進化したストラタシスのFDMテクノロジーは、単なる最終品を作るための技術の枠を超え、ユーザーに新たな価値を与えるといった、時代に適合するための大きな役割を果たしているのです。

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎
明治大学公共政策大学院卒。広告代理店にて大手タイヤメーカー、自動車メーカーなどの総合広告、ブランド・コミュニケーション、マーケティングを行う。その後、専門商社にて測定器関連事業の製品企画・開発を経て、2013年に株式会社アイ・メーカーを設立。これからの時代のものづくりに影響を与える3Dプリントとデジタル技術の情報サイト「i-MAKER.news」を運営。

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