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3Dプリンタで変わる、製品開発とデザイン 第4回

FDMテクノロジーの進化①工業用パーツ編 ~機能性の向上と生産体制の変革~

2015年10月27日  執筆者:原田 逸郎

ものづくりを変えるストラタシスのFDM®テクノロジー

3Dプリンタの中で、最も普及している製法の一つがFDMテクノロジーです。FDMテクノロジーとはfused deposition modelingの頭文字をとったもので、日本語では熱溶解積層法という意味に訳されます。簡単に仕組みをご説明すると、フィラメント(細かい糸)状にしてある樹脂を熱で溶かして押し出し、積み上げて固め物体を生成する技術と言えるでしょう。


FDMテクノロジーは、今から20年以上も前に開発された技術で、ストラタシスの創設者であるスコット・クランプが開発しました。現在は一部の特許が切れたことによって、一般的に利用可能となり、3Dプリンタの廉価版を世に多く送り出すきっかけともなった技術です。ストラタシスが持つ3Dプリンタのラインナップは、大きく分けるとこのFDMテクノロジーとPolyJetテクノロジーの2種類の製法に分類されますが、FDMは今でもその一躍を担う重要な3Dプリント技術であり、20年たった今でも進化し続けているのです。そしてその進化は、ものづくりにおける3Dプリンタの役割を変え、さらには、生産体制、サプライチェーンにいたるまで、巨大な影響を与え始めているといっても過言ではないでしょう。


その最大の特長は、従来の金型などによるプラスチック加工と、同じ素材を使用できる点にあります。言い換えれば、ストラタシスのFDM テクノロジーの3Dプリンタでは、これまで射出成形やCNC加工などでしか作ることができなかった最終品レベルのプラスチックパーツを、物性や機械特性を再現しつつ、尚且つオンデマンドで生成することができるのです。前回の「ものづくりを変える3Dプリンタの進化 ~開発から生産まで~」でご紹介したように、実際のエンジニアリングレベルの素材や、工業用で使用できる精度を持つことで、ストラタシスのFDM 3Dプリンタは、これまでのプロトタイプ製造のための道具といった範疇を超え、新たなオンデマンドの製造マシーンとして真価を発揮し始めています。

デジタルデータからのダイレクト製造が可能に

FDMテクノロジーのデジタルデータから直接物体を製造するといった機能は、ダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング(頭文字をとってDDMという略称で呼ばれる)という新たな製造概念を世に浸透させ始めています。このダイレクト・デジタル・マニュファクチャリングという画期的な製造概念は、さまざまな分野、業界で実際に導入され、製造現場に革新を起こしつつあるのです。


その分野は大きく分けて産業用パーツと、一般消費者が使用するコンシューマレベルのプロダクトで利用が始まっています。ここではまず、導入が広がる産業用でのFDMテクノロジーの利用について具体的な事例を元にご紹介しましょう。そこでは企画から製造までのリードタイムを大幅に効率化し、コスト削減に繋げ、尚且つ製品そのものの性能を向上させるという画期的な取り組みが行われています。

FDMテクノロジーとハイテク樹脂で製品の性能を大幅に向上。ランボルギーニの事例

ストラタシスのFDMテクノロジーの最大の特長の一つが、高性能熱可塑性樹脂を使用することができるという点です。通常、廉価版のFDM 3Dプリンタなどでは、ABS樹脂やPLA樹脂が一般的に使用できる素材ですが、ストラタシスのFDMテクノロジーでは、上記のABS樹脂はもちろんのこと、耐候性に優れるASA樹脂や、高い耐疲労性を持つナイロン12、高い強度を持つポリカーボネートを含むPC-ABSなど、実際の工業用で使用されるハイエンドなエンジニアリングレベルのプラスチックをそのまま使用することができるのです。

こうした高性能熱可塑性樹脂の中でも一際高いスペックを誇るのがULTEM樹脂です。ULTEMは、優れた強度と剛性を持ち、同時に高い耐熱性と耐薬品性を兼ね備えた、ハイテク樹脂とも言えるでしょう。このストラタシスのULTEM樹脂はこうした高い機械的特性から、航空宇宙、自動車、軍事など幅広い産業で使用されています。


例えば、世界的なスポーツカーのメーカー、ランボルギーニでは、エンジン導管の製造にストラタシスのFDMテクノロジーの3DプリンタFortus 400mcとULTEM9085が使用されています。ランボルギーニはご存知のとおり世界的に有名な自動車メーカーですが、レーシングマシーンとして究極の高速性を実現するために、パーツの軽量化と強化を図っています。特にエンジン周りのパーツはエンジン室からの高温とエンジンの衝撃などにさらされるため、こうした環境下でも耐え、尚且つスピードを増加させるパーツの開発が必須なのです。Fortus 400mc のFDMテクロジーによって作り出されるULTEM9085のパーツは、まさに高い耐衝撃性、耐熱性を持ち、軽量化しつつ同時に耐久性を向上させるといった、レーシングカーそのものの性能を向上させるクオリティを発揮しているのです。ちなみにランボルギーニでは生産レベルとしてABS-M30とPC-ABSの素材も内装部品の素材として使用しています。

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性能向上だけではない。リードタイムとコストを大幅に削減 ロケット開発でも最終品として使用

また、こうしたULTEM9085のようなハイテク樹脂と3Dプリント技術は、パーツそのもののクオリティを高めるだけではなく、同時にコスト削減という大きなメリットをもたらします。例えば、ランボルギーニでの導入事例のように、車体そのものを軽量化し、耐久性を高めるという効果を発揮しますが、こうしたULTEM9085の力はロケット開発の分野でも活躍しています。


Lamborghini社はストラタシス3Dプリンタでプロトタイプとレース実装部品を製造、自動車エンジニアリングを新たな領域へ導く


ロッキード・マーティン社とボーイング社によるロケット開発の合弁事業ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)では、使い捨て型ロケットであるアトラスVの開発にストラタシスのFDMテクノロジーFortus 900mcとULTEM9085を導入しています。かつては、140にものぼる金属パーツをアッセンブリーして作っていたダクトパーツを、デジタルデータからの一体成形に変更することで、リードタイムを圧倒的に短縮、コストの57パーセントを削減することに成功しています。もちろん、パーツそのものの耐久性や耐熱性という機械的特性も向上させ、軽量化にも成功しています。


ロケット製造業のUnited Launch Alliance社、ストラタシス3Dプリンタを活用し飛行に使用可能なロケット用コンポーネントを製造

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まとめ

開発から生産まで一連をカバーするFDMテクノロジー

これまでご紹介してきたように、ストラタシスのFDMテクノロジーとエンジニアリングプラスチックは、最終品の製造はもとより、製品そのもののクオリティも向上させています。そしてさらに、コスト削減と製品のパワーアップはそれを使用するユーザーにとっても多大なるメリットを与える事になるのです。例えば、航空機のパーツの耐久性の向上は安全性の向上につながり、製造コストの低下と軽量化は運賃や燃料費の低下にまでメリットをもたらします。
このように、開発から20年以上も経過したストラタシスのFDMテクノロジーは独自の進化をとげ、製造の分野に大きな影響をもたらしているのです。それはまさに、製品開発から試作、そして最終の生産にいたるまでの新たな役割と言えるでしょう。次章では、コンシューマレベルでの使用事例について、FDMの真価をご紹介します。

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎
明治大学公共政策大学院卒。広告代理店にて大手タイヤメーカー、自動車メーカーなどの総合広告、ブランド・コミュニケーション、マーケティングを行う。その後、専門商社にて測定器関連事業の製品企画・開発を経て、2013年に株式会社アイ・メーカーを設立。これからの時代のものづくりに影響を与える3Dプリントとデジタル技術の情報サイト「i-MAKER.news」を運営。

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