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3Dプリンタで変わる、製品開発とデザイン 第2回

3Dプリンタで変わる製品開発 ~デザインとエンジニアリングの統合~

2015年9月30日  執筆者:>原田 逸郎

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デジタルものづくりがもたらす ものづくりにおけるデザインの役割とは

前回、デジタル化が進めば進むほど、デザインの担っている役割が増すというお話をご紹介しましたが、そもそも、ものづくりにおけるデザインの役割とはどのようなものなのでしょうか。


ちなみに「デザイン」という言葉を日本語で言い換えると「設計」という言葉が当てはまります。しかし、実際のものづくりの現場では、もう少し広義の意味で捉えられているケースが多く、単純に「設計」という一言で表現することは難しいのが現状と言えるでしょう。


例えば、基本的な製品が企画されてから量産にいたるまでの工程は、1)製品企画、2)ブランディング、3)デザイン、4)設計、5)試作、6)改良、7)量産という流れになります。これはあくまでも一般論ですが、基本的には、2)ブランディングと3)デザインという工程が一体で行われ、3)の設計は、プロダクトデザインを、物性などの機械的特性を正しく反映し形にする技術として位置づけられています。


別の表現を使えば、2)と3)の部分が「ブランディングとデザイン」、4)が「設計とエンジニアリング」という言い方が適切でしょうか。どちらも、同じ共通する意味である「デザイン=設計」という言葉が含まれますが、求められるスキルは全く異なります。製品の種類や機能によって求められる技術が異なるので一概には断定できませんが、基本的に、「ブランディングとデザイン」、「設計とエンジニアリング」は分けて捉えられているケースが多いと言えます。


しかし、3Dプリンタの性能が飛躍的に向上しつつある今後の製品開発においては、デザインがカバーする範囲は、大幅に拡大されることになるでしょう。「デザイン」と「エンジニアリング」が統合されるだけではなく、上記の工程で言えば「誰にどのような価値を提供するのか」ということを決める1)の製品企画から6)の改良まで、デザイナーが中心となって開発に取り組むということが必要になります。


こうしたデザインの役割拡大は、既に取り組まれているケースも多く存在しますが、デジタル化が進む今後の製品開発においては、より重要性を増すことになるでしょう。

「ブランディングとデザイン」。製品が持つ潜在的価値を最大限印象づける力

上記でデジタル化が進む時代において、「デザイン」のカバーする役割が拡大し、重要性を増すということを述べましたが、ここではデザインのもつ最大の役割、「ブランディングとデザイン」、さらにはその前の工程「製品企画」について見てみることにします。まず、はじめに「ブランディングとデザイン」ですが、ものづくりの中において、その製品の価値を左右する最も重要な工程と言っても過言ではありません。


製品開発というと単なる道具としての機能性や、性能で判断しがちですが、その機能や性能を実現するための背景が必ず存在します。製品という道具は、何も無いところから生まれてくることはなく、必ずその製品の存在価値を示すような理念、社会的意義のような物が根底に存在します。一言で表現するならば、「誰のどんな課題を解決するのか」といった概念・コンセプトになるでしょう。


この「誰のどんな課題を解決し、どのような価値を提供するのか」という部分は、まさに「製品企画」の核になる部分であり、ここでいう「ブランディングとデザイン」とは、その製品がもつ潜在的な力、すなわち「存在価値や理念」と「それを解決する機能」を最も適切な形でアウトプットするための作業と言えます。
言い換えれば、それは単純に外観や見た目だけを整えるといったものではなく、内面的なソフトパワーをハードに落とし込む最も高度な作業であり、対象となるユーザーに正しく製品の価値を伝え、最大限その価値を印象付ける役割を担っているものと言えるでしょう。


第一章で、デジタル技術や3Dプリント技術が普及すればするほど、モノが作りやすくなり、モノ余りの状況を招く恐れがあると述べましたが、どこを見ても類似品が存在する状況の中では、唯一他社との差別化に繋がる部分なのです。

デザインに機能を統合する力。「エンジニアリング」のスキルでスピードアップ

その一方で、今後のデジタル化が進む製品開発の現場において、もう一つのスキル「設計とエンジニアリング」を身に付けることが絶対的に必要になります。


これまで、「設計とエンジニアリング」はプロダクトデザインを機械的に正しくアウトプットするための技術として位置づけられていましたが、今後のスピードアップするデジタルものづくりの現場においては、「ブランディングとデザイン」と一体で行われるべき必須のスキルになります。
一言で「エンジニアリング」といっても、作る製品の種類や機能、またそこに求められる技術によって異なるため、一概に断定はできませんが、少なくとも機能性や使い勝手、耐久性といった機械的強度などは、全てデザインと一体となって表現されなければなりません。いわば、機能面をデザインに統合する必須のスキルと言えるでしょう。


こうした「デザイン」と「エンジニアリング」の統合の背景には、3Dプリンタと3Dソフトの発展が大きく影響しています。例えば、プラスチックのパーツなどを例にとると、従来の金型中心の製品開発では、プロトタイプの開発と確認に多額のコストと時間がかかっていました。簡易金型を設計し作るところから始めなければならず、尚且つデザインを修正したい場合には、また簡易金型を作り直すということが必要です。


しかし、3Dデータからダイレクトにプロトタイプが作り出すことができれば、デザインをアウトプットし、精度を高める時間が飛躍的に早くなります。
これは3Dプリンタの性能が向上すれば向上するほどこのリードタイムは短縮されることになり、デザイン=即試作&改良という図式がより一体化することを意味しています。このような状況においては、デザイナーがエンジニアリングに関する部分も理解し、即開発に活かせるスピード感が重要になるでしょう。言うなれば、製品企画からデザインし、さらにそのデザインを三次元の設計図として落とし込み、適切な形に3Dプリンタで出力、改良して最終版にするといった一連の工程をデザイナーが中心となって行う時代になりつつあるのです。

3Dプリンタがデザインの役割を変える

デザイナーが中心となって、製品企画から最終品の完成まで仕上げるというこの捉え方は、ものづくりのフィールドにデジタル化が浸透しなかったとしても、製品開発の本来あるべき姿として必要です。


ただし、3Dプリンタの性能が年々向上し、物体に落とし込むスピードと造形精度が一定になれば、それ以前の「何を作るか」「誰にどんな価値を与えるか」ということが最も重要になってくるでしょう。
それこそまさにデザインの本来の役割であり、それを具現化するために3Dプリンタを有効利用することが必要になるのです。


次回は「ものづくりを変える3Dプリンターの進化 ~開発から生産まで~

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎
明治大学公共政策大学院卒。広告代理店にて大手タイヤメーカー、自動車メーカーなどの総合広告、ブランド・コミュニケーション、マーケティングを行う。その後、専門商社にて測定器関連事業の製品企画・開発を経て、2013年に株式会社アイ・メーカーを設立。これからの時代のものづくりに影響を与える3Dプリントとデジタル技術の情報サイト「i-MAKER.news」を運営。

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