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3Dプリンタで変わる、製品開発とデザイン 第1回

デジタルものづくりが進むからこそ、デザインの重要性が増す

2015年9月8日  執筆者:原田 逸郎

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デジタル技術と3Dプリンタはものづくりの競争力を飛躍的に高める

デジタル技術の普及は、ものづくりの分野に巨大な影響を与え始めています。とりわけ3Dプリンタの進化は、単なるプロトタイプから、最終品のダイレクト製造にまで使用範囲を広げ、これまでの伝統的な製造方法では実現不可能であったものづくりを可能にします。


こうした3Dプリンタとデジタル技術をベースにしたものづくりの特長は、一言で表現すると企業の競争力を圧倒的に高めるということに集約されるでしょう。製品開発のフィールドでは、スピードアップと金型不要によるコスト削減を、流通と販売のフィールドでは、無駄な材料費をなくし、輸送コストを削減します。いわば3Dプリンタとデジタル技術は、製品が生みだされてから消費者に届くまでの一連の流れ、すなわちサプライチェーンそのものを大きく変えてしまう力を持っているのです。


この最新技術を上手に使いこなすことで既存の製造業は更なる効率化とスピードアップを、新たに製品開発を手がける起業家は10年前とは比べ物にならないくらい低コストで迅速に市場に参入することが可能になります。

デジタルものづくりがもたらすアンチテーゼ。実は物が作りにくい時代?

このように3Dプリンタとデジタル技術がもたらす恩恵は多大ですが、この二つの最新技術を最大限使いこなすためには、その製品を成り立たせている根源的なモノ、コンセプトと、それを適切な形でアウトプットするデザインの力が必要です。製品を構成するこの二つの要素は、ものづくりには当たり前の要素のように聞こえますが、3Dプリンタとデジタル技術が普及すればするほど、コンセプトとデザインは、最も重要な役割を果たすようになるのです。


例えば、将来3Dスキャナーや3Dソフト、3Dプリンタの性能がもっと向上し、誰が使っても一定の性能でモノが作れるようになったら、似たような見た目や似たような機能をもつ製品がますます増えることになるでしょう。


これは極端な例えですが、テクノロジーが進化し、簡単に製品を模倣、参考にすることができるようになれば、安易なものづくりを加速する危険性をはらんでいると言えます。ただでさえモノ余りの現代において、右を見ても左を見ても同様の価格、同様の機能、同様の形状をしたプロダクトが蔓延する中、どのように他社と差別化するのでしょうか。「他社と比べた場合、この形状が違う」「他社と比べれば○○円安い」「他社と比べた場合、少し性能が上だ」といったことは差別化につながるのでしょうか。
おそらく、こうした微妙な差別化は、エンドユーザーに何の印象も残していないでしょう。例えばスマートフォンをカメラの画素数のレベルで判断して購入している人はほとんどいないはずです。

誰が作っても同じクオリティならどう差別化するか。
コンセプトとデザインの役割とは

デジタル技術が普及し、モノが作りやすくなった時代においては、カタチにする技術の精度が一定なため、誰が作っても一定のクオリティを達成することができてしまう。また、デジタルデータに基盤を置いたものづくりは、クラウドを使って不特定多数のアイデアや意見を集約しやすく、従来とは比べ物にならないスピードで開発が進められます。


このような状況は誰でも作りやすくなった反面、ある意味、モノが作りにくい時代ということが言えるでしょう。こうした時代にあっては、他社と差別化し、ユーザーに価値を与える製品を作り出すためには、もっと根源的な部分を明確にすることが必要になってくるのです。それが、前段で述べた、その製品を成り立たせているコンセプトだと言えるでしょう。


つまり、コンセプトとはいわばその製品の存在意義だということができます。もっと細かく言えば「今の時代において、誰の、どんな課題を、どう解決するためのモノか」といったことに集約されます。この社会的意義のようなものを抽出して一言で表現したものがコンセプトであり、そして、このコンセプトをもとに具現化されたものがデザインだと言えるでしょう。


すなわち、コンセプトはその製品を購入してくれる人にダイレクトに響く概念、そしてデザインはその概念を、その製品を購入してくれる人に最大限印象付けるための行為だということができます。そして、この二つの要素がしっかりしたものであって初めて、それを具現化し、アウトプットするテクノロジーとしての3Dプリンタが活きてくるのです。
さらに、デザインの複雑さや金型の制限などによって、実現するのが困難で諦めざるを得なかったコンセプトも3Dプリンタによって可能性が開かれます。
3Dプリントすることを前提とすれば、コンセプトやデザインを見直すきっかけになる、あるいは全く新しい発想で実現することも可能でしょう。

デザイン力と一体となった3Dプリンタがいい製品開発を後押しする

ややもすれば、人間は楽な道を選んでしまうのが人情というもの、製品開発にかけるよほど強い情熱と、エンドユーザーの視点を持った徹底したこだわりをもたない限り、他社が成功しているからといって安易に模倣した製品開発に走ってしまうことがあるかもしれません。


しかし、明確なコンセプトとそれを適切に表現したデザインを作り出すことは、他社との何よりの差別化に繋がるのです。


また、この二つの土台があって初めて企業競争力を強化する3Dプリンタとデジタル技術も真価を発揮すると言えるでしょう。今後3Dプリント技術はどんどん進化することが予測されます。造形精度や製造スピードの向上など、製造マシーンとしての性能がアップし、使用できる素材も増えることになるでしょう。
しかし、どれだけ技術が進歩したとしても、「何を作るか」を生み出すのは人間の頭脳です。また「誰のための製品か」というコンセプトを生み出すのは、人間の情熱です。このような視点から見てみると3Dプリンタは、人に価値を感じさせる「デザイン」と一体なった使い方が最も求められるのでしょう。

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎

株式会社アイ・メーカー 代表取締役 原田 逸郎
明治大学公共政策大学院卒。広告代理店にて大手タイヤメーカー、自動車メーカーなどの総合広告、ブランド・コミュニケーション、マーケティングを行う。その後、専門商社にて測定器関連事業の製品企画・開発を経て、2013年に株式会社アイ・メーカーを設立。これからの時代のものづくりに影響を与える3Dプリントとデジタル技術の情報サイト「i-MAKER.news」を運営。

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