3Dプリンタコラム

世界の事例に学ぶ、3Dプリンタの今とこれから 第5回

ものづくり革命は航空宇宙の世界から

2015年5月29日  執筆者:前田 健二

先日、航空機製造大手のエアバスが、自社の最新鋭機エアバスA350XWBの製造に3Dプリンタを活用、過去最大となる1,000点以上の部品を3Dプリンタで製造したと発表しました。航空機は小型機で100万点、中大型機で200万点という大量の部品から作られますが、1,000点という部品点数はそのわずか0.1%、0.05%に過ぎません。しかし、このニュースは3Dプリンタ業界関係者には非常に大きなニュースとして受け止められました。


航空機製造の世界では3Dプリンタは比較的古くから使われてきました。特に部品の試作品の製造に3Dプリンタが使われ、航空機業界は自動車業界とともに長らく3Dプリンタを最も多く使う業界の一つでした。しかし、実際の航空機部品作りに3Dプリンタが活用されるケースは一部にとどまっていました。ところが、今回のエアバスの発表によるとエアバスは実際の航空機部品作りに3Dプリンタを活用し、その点数が1,000点に達したと報じているのです。つまり、3Dプリンタで航空機を作る時代の幕が開けたと伝えているのです。

エアバスA350XWB

3Dプリンタの進化と、素材の進化

今回のエアバスA350XWBのパーツの製造には、3Dプリンタ製造大手ストラタシスのFDM 3Dプロダクションシステムが使われました。高い強度とプリント品質に優れ、難熱性基準等の素材基準も満たすULTEM 9085という材料が使用され、これはエアバスが定める基準も満たしています。


つまり、3Dプリンタの性能向上と併せて3Dプリンタで使われる素材の品質や機能も向上し、航空機部品製造に求められる水準に到達したため、実際の製造に3Dプリンタが使われるようになったのです。それゆえ、3Dプリンタ業界関係者は今回のこのニュースを非常に大きく受け止めたのです。いよいよ本格的なアディティブ・マニュファクチャリングの時代が到来したと受け止めたのです。

FDM 3Dプロダクションシステムで作成されたULTEM 9085のパーツ

アディティブ・マニュファクチャリングとは何か?

ところで、上にアディティブ・マニュファクチャリングと書きましたが、アディティブ・マニュファクチャリングとは一体何でしょうか?


アディティブ・マニュファクチャリング(Additive Manufacturing)はAMと略されますが、日本では「積層造形」と訳されます。アディティブの直訳は「付加的」ですので、モノにゼロから少しずつ「付加」つまり足しながら造型するモノづくりというイメージです。


一方、従来型のモノづくりの多くはアディティブではなく逆にサブトラクティブ・マニュファクチャリング(Subtractive Manufacturing)です。切削加工がシンボリックな例ですが、従来のモノづくりは素材を切ったり削ったりして造形するモノづくりです。一方、アディティブ・マニュファクチャリングにはサブトラクティブ・マニュファクチャリングにはない画期的なメリットがあります。素材も無駄を極限まで削減し、製造コストと製造時間を大幅に短縮可能にします。さらに、スパース(中空構造)での造形が可能であるため、航空機を始め「軽量化」が非常に重要視される業界においては大きなメリットとなります。

アディティブ・マニュファクチャリングで製造されたパーツ

必要なモノを必要な時に必要な数だけ

航空機は、買うなりリースなりして調達して飛ばせば運行出来るという代物ではありません。上に一機の航空機には100-200万点の部品が使われていると書きましたが、航空機を運航するにはそれなりの点数の予備部品、スペアパーツを常備しておく必要があります。航空機の種類にもよりますが、航空会社は通常、1,000-2,000万点ものスペアパーツを常備していると言われています。このスペアパーツの在庫管理と物流が航空会社にとっての悩みの種で、多く常備すればコストが上がり、少ないと供給に問題が生じます。現在、世界の主要航空会社は相当のコストをかけてスペアパーツを常備しています。


そうした中、スペアパーツをアディティブ・マニュファクチャリングで製造出来たとしたらどうなるでしょう?航空会社はスペアパーツの在庫管理の問題から解放され、コストも大幅に削減出来ることでしょう。実際のところ、エアバスもライバルのボーイングも、アディティブ・マニュファクチャリングの活用領域としてはスペアパーツの分野にも注目しているようです。この分野は現在、胎動が始まった状態にありますが、今後急速に伸びて行くことは間違いないでしょう。

ロケット作りにも3Dプリンタが

航空機同様、ロケット作りにも3Dプリンタが使われ始めています。アメリカのロケット製造ベンチャーのスペース・エックスは、昨年打ち上げたファルコン9型ロケットに、3Dプリンタで製造したメインエンジン用酸化バルブを世界で初めて使用しました。非常に高い強度が求められる酸化バルブの製造にはレーザー焼結方式の3Dプリンタが使われましたが、プリントされた酸化バルブの安全性と耐久性にまったく問題がないことが証明されました。


ロケットの部品も航空機同様、あるいは航空機以上に「必要なモノを必要な時に必要な数だけ」作れれば理想的です。スペース・エックスは自社ロケット部品製造を3Dプリンタに順次切り替え、打ち上げコストとスペアパーツ在庫管理コスト削減を狙っています。ロケット打ち上げビジネスの国際的な競争が激しさを増す今後、同社の3Dプリンタ戦略は多くのメリットと優位性を同社にもたらすことでしょう。

スペース・エックスのファルコン9型ロケット

profile_maeda

前田 健二
1966年東京都生まれ。1990年大学卒業後渡米し飲食ビジネスを立上げ、帰国後内航海運企業、ネットマーケティングベンチャーなどの経営・起業に携わる。2001年より経営コンサルタントとして活動を開始。製薬会社の再生、ベンチャー企業の経営支援等を経て、現在は3Dプリンタビジネスを含む新規事業立上コンサルティングを行っている。

3Dプリンタが分かる入門ガイドブックを無料ダウンロード

スゴさが分かる!3Dプリンタ入門

3Dプリンタについてさらに詳しく学べる
ホワイトペーパーをご用意いたしました。

Stratasys Ltd. © 2015. All rights reserved. See stratasys.com/legal for trademark information.