3Dプリンタコラム

オープンイノベーションがもたらすものづくり革命 第4回

オープンイノベーションとコンプライアンスは共存可能か? 〜後編〜

2015年5月14日  執筆者:株式会社カブク 稲田 雅彦

製造物責任(PL)や著作権にも、新しいルールを

今回のコラムでは、ものづくりに関わる企業にとって重要な問題である、製造物責任(PL)法や著作権について考えてみたいと思います。


オープンイノベーション型のものづくりでは、製品のデータをオープンにすることで、社外のクリエイターやエンジニアが自由にデザインをカスタマイズしたり、独自のアイデアを付与できるようになり、製品に多様な付加価値が生まれていきます。
しかし、もしその製品に不適切な改造が加えられて、ユーザーがケガをしてしまった場合、誰に責任が問われるのでしょうか?ケガをするような危ない改造をしてしまった張本人に責任が問われると同時に、連帯責任として、ベースとなるデータを提供した企業側にも責任が及んでしまうと考えられます。


製造物責任の問題は、企業がオープンイノベーションに対して及び腰になってしまう一因にもなっており、システムとしてうまく品質や安全性を保証できないかという議論が、最近盛んになってきています。

システムによって、製造物責任や品質を担保する

たとえば、形状をデザインするときに、「R(アール)の部分をこれ以上尖らせると危ない」といった危険を自動で検知し、アラートを出して知らせるようなシステムづくりが、一部で進みつつあります。オープンイノベーションのためのプラットフォームを設け、その中で構造や素材・カラーリングなどに対して制約条件を設定し、システムとして危険を防止するための取り組みです。


こうしたシステムが整備されることで、デザインする側も、知らずに危険なものをつくってしまうリスクが無くなり、安心してものづくりにコミットできるようになるでしょう。
ソフトウェアの世界では、こうしたシステムが既にかなり進んでいて、プログラムのソースコードを書いてアップすると、バグやスキミングなどの悪質な機能が自動で検出され、チェックが入るようになっています。ハードウェアでも、ある程度システムによって製造物責任や品質を担保できるようになるのではないかと考えています。

クリエイティブ・コモンズに学ぶ、新しい著作権の在り方

著作権も、今まさに法律的な議論が進められている問題です。株式会社カブクの顧問弁護士でもある水野祐(みずの・たすく)先生は、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事を勤められています。クリエイティブ・コモンズとは、インターネット時代のための新しい著作権ルールの普及をめざすプロジェクトです。

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たとえば、アーティストやミュージシャンが楽曲を制作すると、そこには著作権(Copyright)が発生し、作者の死後50年まで権利が保護されます。その反対に、作品に対して一切の権利を放棄することをパブリックドメイン (Public domain)といいます。クリエイティブ・コモンズは、その間を規定しようという取り組みです。10年ほど前からアーティストの楽曲をリミックスやマッシュアップしてインターネットで配信するという文化が盛んになり、著作権の在り方が見直されるようになってきました。権利を頑なに保護するか、放棄するか、という二者択一ではなく、決められた条件のもとであれば作品を使用しても構わないという意思表示をできるようにしたのが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスです。
ライセンスにはいくつかの種類があり、「原作者のクレジットを表示すれば利用して良いですよ」であったり、「非営利であれば改変を加えて構いません」といった条件を選べるようになっています。

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「情報」と「物質」の間をつなぐ、ファブ・コモンズ

そして、クリエイティブ・コモンズの考え方を楽曲や文章だけでなく、モノにまで拡大していこうというのが「ファブ・コモンズ」という活動です。
水野先生はよく、情報と物質の間をデザインするという話をされているのですが、たとえば、椅子や机という「物質」自体は著作権を持っていません。それがモノになる手前の3Dデータや設計図などの「情報」は、それをつくった人に権利があります。3Dデータから3Dプリンタに起こして椅子にしたとき、その椅子自体は一般的なモノなので表現性を有しなければ著作権は持ちません。しかし、逆にそれを3Dスキャナーで読み込んでデータ化してしまうと、「それは誰のものなのか?」という話になってしまいます。昔でいうと、プログラムや文章などは著作権があるため、それをコピー&ペーストして盗用すると著作権違反になったのですが、モノの場合、3DCADからモノに変換して、それを3Dスキャナーからまたデータに変換するとなぜか著作権が無くなってしまうという、よく分からない状況が起こっています。実はまだ、法律的には何も規定されていない部分です。
今は、ソフトウェアの世界のLinuxのように、オープンソースのハードウェア版のようなものが多く出始めています。そして、その場合の著作権の在り方はどうするのかという議論も生まれています。権利の保護と、ものづくりの自由な広がり。その間をどう規定していくのか。今後も目が離せないテーマのひとつです。


Fab Commons

Fab Commons(ファブ・コモンズ)は、オープンデザインのためのライセンス体系や社会におけるオープンデザインのあり方を模索するため、FabLab Japan(現在FabLab Japan Network)のメンバーである川本大功、菊地開司、水野祐らによって2011 年に結成されたユニット。

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リスクをうまくヘッジできた企業が、オープンイノベーションを
成功させる

オープンイノベーションは、ソーシャルメディアが登場したときのインパクトと似ています。これからのものづくりに、圧倒的なスピード感と圧倒的な広がりをもたらしていくことは間違いないでしょう。私は、もはやそこに関与しないという選択肢は無いと思っています。いかにリスクをうまくヘッジしながら、オープンな文化を受け入れ、向き合っていくかということが、あらゆる企業にとって重要なポイントになってくるのではないかと考えています。
そして、その方法をうまく構築できた企業が、オープンイノベーションの恩恵をより多く享受できるのではないでしょうか。

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株式会社カブク 代表取締役 稲田 雅彦
東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。修了後、博報堂入社。入社当初から、様々な業種の新規事業開発、統合コミュニケーション戦略立案、クリエイティブ企画開発、システム開発を行う。カンヌ、アドフェスト、ロンドン広告祭、TIAAなど、受賞歴多数。2013年株式会社カブクを設立。主な著書「3Dプリンター実用ガイド」など。3Dプリント技術を使った デジタルものづくりサービス「rinkak」を運営。

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