3Dプリンタコラム

3Dプリンタ活用のためのヒント 第4回

適切な3Dプリンタの選び方

2015年4月30日  執筆者:水野 操

一口に3Dプリンタを選ぶ、と言っても3Dプリンタには、FDMやPolyJetをはじめとして様々な方式があります。そこで使用される材料も違うので強度などをはじめとする様々な物性もことなりますし、仕上がりも異なります。比較的小型のものから、かなり大きなものを出力できるワークサイズを持つものまであります。ある方式に絞ったとしても、そのラインナップの中でさらに選択の余地が存在します。


また、一般に業務でしようするには業務用の3Dプリンタをと考えることが多いかもしれませんが、その手軽さやランニングコストが安価なことから、本格的な試作の前に、精度にはこだわらず、考えているアイデアを検証したいなどの用途でパーソナル3Dプリンタを使っている人も珍しくはありません。


つまり、「3Dプリンタを購入しよう」と考えた時に、実は選択の幅がかなりあることがわかります。そこで適切な選択をするためには、自分にとってのプライオリティをはっきりさせておくことが重要です。


とはいえ、どのようなことを判断の基準にしてよいのか、ということがよくわからないという話もよく聞きます。出力を外部に委託する場合には、基本的にはコストと仕上がり、それに目的に応じた材料の選択程度でも充分と言えますが、自社で購入するとなるとそれだけでは話は終わりません。今までは出力業者が出力に関する細かいところまでやってくれていたのを全部自分でやらなくてはいけないわけですから。


そこで、今回は適切な3Dプリンタを選ぶポイントを考えてみたい。

3Dプリンタを選ぶポイント1 何をつくるのか?

最初に考えたいのは、自分たちが主に3Dプリンタで作るのは、どのようなものか、またそのパーツの目的、狙いはどのようなところにあるのか、ということでしょう。


・形状の再現度 016_05

非常に微細な形状を再現しなくてはならない、大きさ自体も小さいパーツをFDMでという場合には、その微細な形状の大きさにもよりますが、0.2mm程度のくぼみなどもきれいに表現してくれる光硬化性樹脂を使用する3Dプリンタに比較すればやはり無理があると言ってよいでしょう。
例えば、ジュエリーなどでは単にそれらしい形が出るだけでは駄目で、原型として役に立つものを作らなければいけないわけですし、パーツなどでも小さなパーツ同士の勘合などをきっちりと再現したいという時もやはりインクジェット等、光硬化性樹脂を作るほうが有利でしょう。


その一方で、もっと大きなパーツの試作で、例えば設計の初期段階でいくつかの筐体の検討をしたい、などの場合にはFDMや粉末焼結(ただし、粉末焼結式の3Dプリンタは最も高価な部類の機械ですが)などのほうが、その役割を果たしやすいと言えます。
一般的にはコスト面でもこちらのほうが有利です。特に大物のパーツを出力してみるとわかりますが、圧倒的にFDMなどのほうがコストを抑えることができます。(機械を持っていなくても、出力サービスなどで依頼をしてみるとわかります)


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また、FDMでもDimensionのような業務で使用するFDMの場合には、サポート材のみをアルカリ水溶液で溶かすことで、細かい形状にダメージを与えることなく除去することができるので、リーズナブルに細かい形状も保ちつつ出力することができます。


筆者の場合にも、この後に示すような条件を考慮しつつ、どの方式でパーツを出力するかを考えています。


・仕上がりの平滑さ

もう一つ、よく話題に上がるのがパーツの表面の滑らかさです。「精度はどうですか」と聞いてくる質問をよくよく確認してみると、表面の滑らかさであることも案外多いのです。
3Dプリンタというと、表面の積層の縞を思い浮かべ、どこまで滑らかになるのだろうと考えるわけです。そして、積層ピッチを細かくすればするほど、表面はツルツルになるのではと考えるのです。


確かに、あるレベルまでは積層ピッチと表面の平滑さには相関関係があるともいえるでしょう。パーソナル3Dプリンタでも、積層ピッチが0.4ミリと0.15ミリとでは明らかに表面の綺麗さに違いがあります。
でも、0.15ミリにしても綺麗な表面にはなりますが、はっきりとした縞模様という点では同じです。逆にさして違わないピッチ幅でも、光硬化性樹脂を使用する方式のほうが、概ねツルツル感がFDMや粉末焼結よりもあることがわかります。
もちろん、一般論からすれば、滑らかであるほうが滑らかでないより良いでしょう。ただ、先ほどのように例えば筐体の形を確認したり、グリップの握りを確認するなどの目的であれば、それほど問題にはならないでしょう。でも、それが例えばジュエリーの原型や、あるいは歯科技工のサージカルガイドなどではかなり大きな問題になるでしょう。


もう一つ気をつけたいのは、滑らかだから形が正確とは限らないということです。前述のクロスレビューの際にも、そのような点が浮かび上がりました。あるドーム形状を意図的に相当に粗いSTLで出力しました。
STLが粗いということはドームが、三角形でドーム形状が構成されているということがはっきりとわかるはず、ということです。


FDMや多くの機種においては、この点は問題がなかったのですが、中にはかなり滑らかなドームになっていたものもありました。これは、硬化に時間がかかってその間に形状がなまってしまったのかもしれません。実際、本来かなりシャープなエッジとなるべき形状が、まるで意図的にフィレットをかけたかのような角になり、つまりエッジがたっていない形状になってしまいました。
例えば、ゆるキャラのような全体に丸い形状の場合には大きな問題にはならないと思いますが、機械部品などに使用するのはためらわれるかもしれません。


・大きさ

大きさという場合には、二つの観点が考えられます。一つは自分たちが主に出力する造形物のサイズがどのくらいか、ということです。
当たり前ですが、より大きなワークサイズを持つ機械であれば、パーツ分割の必要なしに作成できるパーツが増えます。自社のパーツが比較的大きいという場合に、これは重要です。もう一つはコストです。一般に光硬化性樹脂を使うほうが、金額が高くなりがちです。小さな部品の場合には、極端な差がでなくても、自動車の大物パーツなどでは金額の差が予想されます。FDMの場合には、ソリッドな形状の場合でも、目的に応じて中空低密度や中空高密度などのコントロールをすることもできます。

3Dプリンタを選ぶポイント2 どのような使い方をするのか?

一般的には、ここまでに述べてきたことが、検討のテーブルに乗ることが多いと思いますが、他にも確認したいことがあります。


・材料(種類、物性、経時変化)

材料も負けず劣らず重要なポイントです。その第一が材料の種類です。よく「3Dプリンタでは材料が選べませんよね」と聞かれることがありますが、現状では確かにそこは否定のしようがありません。
切削加工であれば刃物で削れるものであれば材料を選べますし、射出成形でも自分で選択した樹脂を使って成形することも可能です。3Dプリンタの場合には、プリンターメーカーが提供している材料を使うことになるので、そのプリンターが自分の使いたい材料の物性に近いものを使うことができるのか、ということは大事です。


ここでのポイントはやはり、どのような目的で出力したパーツを使用するのか、ということです。形が確認できれば良い、ということであれば極論すれば、それほど材料が大きな論点にはならないと言えます。しかし、機能面の検討もしたいとなると、今度は柔軟性を持つ材料が求められます。購入前に使うことのできる材料とその物性も調べておいたほうがよいでしょう。


・二次加工

二次加工の必要性は必ずしもないかもしれませんが、ちょっとしたモックアップの場合には、例えばサーフェサーを吹いてから塗装するなどのことがあるかもしれません。あるいは磨きたいなどの話もあるかもしれません。あるいは、例えばFDMで作ったABSのパーツなどの場合には、表面をアセトン系の樹脂を使って滑らかにするなどのことも可能です。
もし、二次加工の必要性があるのであれば、そのことも考慮してみましょう。


・設計検討/試作/教育

すでに述べてきたことに関係しますが、ざくっと設計のアイデアを検討するとか、形状の確認で良いのであれば、それほどここまで述べてきた条件を厳しく見る必要はないかもしれません。
一口に試作といっても何をどの程度のレベルで検証するのかでも、厳しく条件を見るかどうかは変わります。


また、教育機関などでは、必ずしも高価な業務用機種が良いとは限りません。
一般に業務用の機械の場合には、機械本体だけではなく材料なども含めてランニングコストは、パーソナル3Dプリンタよりも高くつきます。さらに、学生の教育目的という簡単から言うと、自分が設計したものをすぐに確認したいのに、機械が占有されていて中々使えないという状態では問題がありますし、先生もコスト面からも気軽に学生に使われては困るということもあるでしょう。であれば、業務用の機械がすでにあれば、パーソナル3Dプリ���タを研究室レベルで数台入れておくというほうが有効で、実際そのような声を大学の先生からお聞きすることが増えてきました。

3Dプリンタを選ぶポイント3 全体的な使い勝手

必ずしも判断の基準とはならないものの知っておいてほうがよいことは他にもあります。


・ソフトウェア

どの3Dプリンタにも必要なものが、STLデータを実際に3Dプリンタで出力するために必要なスライサーや制御のソフトです。
業務用の3Dプリンタの場合には、それぞれのメーカーが開発している専用のソフトを使用することになります。したがって、通常ハードウェアで3Dプリンタを決めるので、ソフトウェアだけを検討するということはありませんが、どのようにデータをセットアップしていくのかを知っておいても良いでしょう。


パーソナル3Dプリンタの場合には、専用ソフトがある場合もあれば、オープンソースのものを使用する場合や、別途有償ソフトを使用する場合もあります。この場合には、ソフトウェアは充分に検討の余地があります。


・後処理について

3Dプリンタで出力をする場合について回るのが、サポートです。サポートの素材やつき方が違います。
当然ながらサポートの落とし方も方式、機械の種類やメーカーによって特徴があります。出力サービスなどを使用している時には、ここもあまり目にしないところですが自分たちで運用する場合には、どんなプロセスでどの程度の手間がかかるのかなどを知っておくことは悪くありません。
サポート以外にも、例えば光硬化樹脂などを使用する場合には、二次硬化が必要な機種もあります。


・ランニングコストについて

当たり前ですが使えば使うほど、材料を消費します。設計開発の中で使う場合には当然、開発コストの一部ですから、どの程度の運用でどの程度のコストがかかるのかは考えておきたいところです。
また、機械なのでどうしても不調は避けられないことでしょう。そうした時のサポート体制やコストという面では、やはり買う立場としては気になって当然と言えるでしょう。


3Dプリンタを選ぶポイント3 出力サービスを使ってみる

いくつか、3Dプリンタを選ぶ上で注意したいポイントを示してみました。もちろん、これが全部ではありませんし、逆にこれらを全部確認しなくてはいけないというものでもありません。
ただ、一つ言えるのは、3Dプリンタに限った話ではありませんが、使ってみないとわからないことも多いのです。そこで使えば使うほど経験値も増えて自分なりの判断ができるようになります。


ただ、出力品が自分たちのニーズに合っているかどうかは、昨今であれば比較的容易に検証することができます。それが、出力サービスの利用です。
一つのサービスで多様な方式を展開しているところもありますし、複数の会社のサービスを使えば、現在市場で使用されている主だった3Dプリンタによる出力結果を自分たちの普段のパーツで試すことができます。


そこで気にいった方式を中心に検討すれば、より主体的な選択ができるのではないでしょうか。

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水野 操
大手PLMベンダー、外資系コンサルティングファームにて自動車、総合家電メーカーの3D-CADやCAE、PLM導入に携わったほか、プロダクトマーケティングや新規事業開拓に従事。 2004年11月に有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、代表取締役に就任。オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングや3次元CADやデータ管理をはじめとするIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)他多数。また、専門誌やウェブメディアに連載多数。

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