3Dプリンタコラム

オープンイノベーションがもたらすものづくり革命 第3回

オープンイノベーションとコンプライアンスは共存可能か? ~前編~

2015年4月15日  執筆者:株式会社カブク 稲田 雅彦

オープンイノベーションには 新しいルールが必要

第1回・第2回のコラムでは、3Dプリンタを活用したオープンイノベーションがもたらす可能性についてご紹介しました。企業がクローズドな空間から一歩外へ出て、オープンな世界とつながることで、商品企画やものづくりに圧倒的なスピードと多様性が生まれていきます。
一方で、企業として製品を提供する以上、QA(クオリティ・アシュアランス)やQC(クオリティ・コントロール)と言われるような品質保証の問題や、PL(製造物責任)法などの問題を避けて通ることはできません。


オープンイノベーションは、ものづくりに自由な広がりをもたらします。しかし、そこがルール不問の無法地帯となってしまっては、企業にとって同時に、多大なリスクをもたらすことになってしまいます。
リスクがあるから手をつけない、ではなく、リスクといかに向き合いながら、オープンイノベーションの恩恵をビジネスに取り入れていくか?
今、新しいルールやポリシーの策定が求められています。

ソーシャルメディアに学ぶ、社内ルール・ポリシーの考え方

先行して、ソーシャルメディアの領域でも、同じような問題が起こっていました。2009〜2010年頃、TwitterやFacebookが急速に社会へ浸透し、企業としても無視できない大きな流れになっていきました。「SNSを広報に活用できないか?」「生活者へダイレクトにメッセージを発信できないか?」というニーズが生まれ、TwitterやFacebookのアカウントを取得する企業が、次々と現れ始めました。
同時に、問題も顕在化します。これまでの広報ルールや承認の仕組みでは、リアルタイムなコミュニケーションが重視されるSNSのスピードに追いつけないのです。もしTwitter で1回“つぶやく”ごとに、承認に1週間を費やしていては、SNSの利点を活かすことはできないでしょう。大きな企業ほど、この問題は顕著でした。そこで、広報部のチェック機能と権限の一部を、現場に移譲する動きが見られるようになりました。
また、そのアカウントにどのような“人格”を持たせ、どのようなトーン・言葉づかいで生活者に話しかけるのか、といった具体的な議論も行われました。他社の批判はしない、政治問題については言及しない、などのルールづくりも進められました。

技術やシステムが変われば、ルールも変わる

もうひとつ例を挙げると、ビッグデータの運用やクラウド化の流れの中でも、ルールの変更と策定が求められています。これまで、一定の規模以上の組織になると、社内に専用回線を引いて自社サーバーを保守管理するというスタイルが主流でした。サーバーは企業の生命線であるため、厳格なルールのもとで徹底管理されていました。
たとえば、ある企業が自社サーバーからアマゾンのクラウドシステムに切り替えた場合、ハードとしてのサーバー設備は自社のコントロールの及ばない、サービス提供会社の施設内に移ります。すると、新しい状況に即したセキュリティポリシーやルールが必要になります。こうした流れが、ビッグデータ・クラウドの領域でも、2010年頃から起こっています。


技術が先に進むと、それに合わせてルールも変わらざるを得ない。ものづくりの領域も、まさに今その過渡期にあるではないかと感じています。

別ブランドという選択も 小さくはじめて、大きく広げる

企業がこれまで築き上げてきたブランドや品質・サービスへの信頼、その有形無形の価値は計り知れないものがあると思います。ものづくりのスタイルが変わることによって、ブランドイメージが損なわれたり、既存のお客様を失ってしまうのではないかという懸念も当然あるでしょうし、社内のルールを一度に大きく変えるのは現実的には難しい場合も多いはずです。


そこで、新しいブランドラインやドメイン、プロジェクトなどを立ち上げて、まずはその中でオープンイノベーションを試みるという選択肢もあります。

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たとえば、ソニーのスタートアッププロジェクトとして開発されているDIYツールキット「MESH」。「MESH」とは「Make」「Experience」「SHare」という3つの言葉をもとにしたネーミングで、加速度センサー・LED・プッシュボタンといった機能を備え、iPadアプリによる直感的なプログラミングで、さまざまなモノを作り出すことができるプラットフォームです。このプロジェクトでは、あえて「SONY」というブランド名を出さずに、クラウドファンディングを活用して資金調達を試み、製品化をめざしています。


企業本体のブランドイメージや社内規定にとらわれずにチャレンジングな取り組みができる場をつくり、そこでスモールスタートを切り、成功事例が生まれれば、他のプロダクトや部署へと波及させていく。こうした取り組みが、大手メーカーの中でも既にいくつか生まれつつあります。
企業としてのリスクヘッジとリスクテイクのバランスを考えながら、小さくともまずはイノベーションに向けて歩み始めることが大切なのでないでしょうか。


次回は後編として、オープンイノベーションに伴う製造物責任や著作権の問題についてお伝えしたいと思います。

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株式会社カブク 代表取締役 稲田 雅彦
東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。修了後、博報堂入社。入社当初から、様々な業種の新規事業開発、統合コミュニケーション戦略立案、クリエイティブ企画開発、システム開発を行う。カンヌ、アドフェスト、ロンドン広告祭、TIAAなど、受賞歴多数。2013年株式会社カブクを設立。主な著書「3Dプリンター実用ガイド」など。3Dプリント技術を使った デジタルものづくりサービス「rinkak」を運営。

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