3Dプリンタコラム

3Dプリンタ活用のためのヒント 第2回

開発業務のプロセスと3Dプリンタ

2015年2月19日  執筆者:水野 操

前回、3Dプリンタの活躍の範囲は、実に幅広く何か形を作ることが必要な分野であれば、多種多様な産業で、様々な活用方法があることがわかります。実際、様々な活用事例を知り、自社でも活用していこうと積極的に考えはじめている企業も増えてきています。
とはいえ、同じような産業分野に属していても、会社ごとの事情はかなり異なります。単に事例を知るだけでは、自社にどのように活用していくべきか、具体的に自分たちはどのように3Dプリンタ活用への取り組みを進めたらよいのか、わからないという声が多いのも事実です。


事実、筆者のところに相談に見えられる方の中にも、そのような企業さんたちもいらっしゃいます。そこで、今回は、もう少し製造業という産業分野を意識して、そのヒントを探っていきたいと思います。

製品開発業務と3Dプリンタ

従来から、製品開発業務における3Dプリンタ活用というと「試作業務の一部だよね」という意見が返ってくることが多いのは事実です。実際、開発早期における形状の試作や一部の機能試作に3Dプリンタを活用することが多い、ということを否定する人はいないでしょう。


逆に、現時点での3Dプリンタでは、一時期の報道のような「革命」的な何かがそのまま起こるわけではありません。「将来の可能性としては?」的な形で質問をされる方もいらっしゃいますが、将来の可能性の話は、つまるところ、「たら」「れば」の話になり、実際に自分たちの業務に導入するという意味では、ほとんど役に立たないので、あくまでも現時点で自分たちが、現実的に使うことのできるテクノロジーをベースに話を進めていくことが重要です。


次に示す図は筆者が現時点で、製造業と3Dプリンタの関わり合いをプレゼンなどで説明する時に使う図です。

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この図は比較的量産品を意識したもので、一品一様なカスタム製品などは、また異なるかもしれませんが、概ね多くの製品開発の流れで使うことができるかと思います。ポイントとしては、他の様々な加工方法と違って、データさえ自分で作ることができれば、あとは比較的簡単に、アイデアを物理的なものにすぐに形にすることができるという特徴が活きるのが、やはり開発工程の上流でしょう。さらにメーカーによっては、出力した造形サンプルに対して、本番製品にかなり似せた形で、塗装をし、中身の重量まで調整したモックなどを作り、検討をする場合もあります。


クライアントとの関係上、具体例を申し上げるのは難しいのですが、まず、3Dデータで出来上がりを確認した後に、光造形で出力し、それに塗装などをして試作にするととともに、それを原型として、3Dデータと合わせて量産の準備に使う、という流れ作業を筆者もつい先ごろ行っていました。このような流れをスピーディーに行うことができるのがメリットでしょう。


もう一つは、コミュニケーションへの活用です。最近は、ことさらに使われなくなった以前の流行り言葉に、フロントローディングというものがありますが、製品開発において設計変更のコストは、できる限り上流で行うほうが、コストを最小化しつつ効果を最大化する意味でもよい、ということが言われていますが、実際には多くのハードルがあります。一つの問題が図面です。図面ベースで仕事をしていると、設計や製造関係の技術者以外がそこに関わることが難しいのが現実です。
しかし、あたりまえですが、技術者だけが開発関係者ではありません。そこで、まず登場するのが、3D CADです。3Dデータは、言ってみればバーチャルな「もの」ですから、画面上とはいえ立体として形を確認できるので、営業やマーケティングなど図面に馴染みのない人でもわかりますし、技術者であっても誤解や行き違いを防ぐメリットがあります。それでも、十分に効果があるのですが、やはり物理的に手にとってみないと確認できないこともあります。それで試作が必要になりますが、3Dプリンタでは試作を比較的簡単に短時間で行うことができるのです。実際に形になれば、どんどん意見が出てくることが珍しくありません。


さらに、一歩進んで新たな製品の開発で、工業デザイナーと伝統工芸の職人のコラボまで進めたという例もあるくらいですから。


図中ではあえて囲んではいませんが、営業やマーケティング時のサンプルとしても、3Dプリンタによる出力物を加工して使うということが可能でしょう。


では、後工程で使うことはできないのか、というともちろんそうではありません。よく、「3Dプリンタって試作レベルで使用するんですよね」とか「最終製品で使うことはできませんよね」と言われることがありますが、そうとは限りません。製品を作っている人たちや、ユーザーがそれで良いと考えれば3Dプリンタで作ったものも最終製品になります。


作る製品の数が少なく、3Dプリンタで使用する素材やその仕上がりに問題がなく、かつ最終製品として求められる品質と機能を満たすのであれば、それはそれで最終製品として使えばよいのです。

つまるところ試作用と最終製品用の3Dプリンタがあるわけではない。開発工程の中で3Dデータが使用されているのであれば、あとはその製品に求めることと使用する3Dプリンタによる出力物との機能が合致すれば、開発プロセスのどこであろうと使えばよいのではなかろうか。

様々な造形方法と3Dプリンタ

とはいっても、やはり造形方法には向き不向きがあるのも事実でしょう。ここで、主な造形方法を振り返ってみたいと思います。一般的な製造方法としては、塊から何かを削り出す切削加工、溶けた材料を型に流し込む鋳物や射出成型、型に材料を押し付けるプレス成型やあるいは板を曲げる板金加工、そして材料を積み上げて作る積層造形、すなわち3Dプリンタです。

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これらの異なる加工方法が共存している理由は他の加工方法にはない特徴があるからだ、と考えることができるでしょう。
一個しかつくらないのに金型を起こすのは割に合わない話です。目的にもよりますが、普通は3Dプリンタや切削加工を考えたほうがよいでしょう。3Dデータがすでに手元にあり、すぐにでも実際に確認したいのであれば、まずは、3Dプリンタを使ってみる、というのは自然な流れでしょう。


逆に10,000個を単価を押さえて作らなければならないのに、全部切削加工とか3Dプリンタでといえば、それは非現実的な話になります。


材料の問題もあります。例えば、医療機器の場合には、たとえ試作レベルであっても医療機器としての認証をとるための試験にそれが使われるのであれば、材料も含めて本番の製品で使用されるものを使わなければ、意味がありません。そういう意味では、任意の素材を使用することのできる切削加工やアルミを使う簡易金型は効果的です。


一方できちんと機能することが重要で、むしろトライアル&エラーを効果的に行うことがポイントの場合には、同じ一個を作る場合でも、3Dプリンタが効果的でしょう。


大事なのは、現時点におけるそれぞれの加工方法の特徴をよく知って、それぞれに向いた方法を使えばよいのです。

これまで産業をどのように変えてきたのか

3Dプリンタが産業をどのように変えたのか、ということを述べることは大変に難しいことです。まず、産業以前の話として個別の企業がどう変わったかに関しても、3Dプリンタに関わらず、導入したテクノロジーによって会社がどう変わったか、仕事のやり方がどう変わったのかを、オープンにする会社はあまりないでしょう。
試作ビューローなどはずいぶんと昔から、3Dプリンタを使っているわけで、社内では何か大きく変わっているかもしれませんが、それが効果的であればあるほど教えてはくれません。


また、世の中には基本的には「魔法の弾丸」があるわけではありません。何か特定の道具がすべてを変えるというのは幻想なのではないでしょうか?3Dプリンタも同様です。3D CADをはじめとする関係する道具や、それを使う人がいてこそのもので、どの道具一つとっても単独で存在しているわけではありません。小規模なMakersが成立するようになったのも、一連の開発から販売までを成り立たせる様々な道具とエコシステムが整ってきたからだ、ということができるのです。


大事なのは、これまで産業や企業がどう変わってきたのかを知ることではなく、使いとして何をしたいのか、が重要です。だからこそ、3Dプリンタは、これまでものづくりに携わっていなかった人たちがものづくりに携わるきっかけになり、小規模メーカーの重要な道具になり、あるいは元々製造業にいた人たちがあらたに自分の事業領域を広げるきっかけになっているのです。

自分たちはどのように取り組みを進めるべきか

さて、実際に3Dプリンタを事業に活用したいというご質問を受ける際に、あるいは講演などをさせていただく際によくある話が3D CADや3D CGがまだ導入されていないということです。
いきなり、テクニカルな話になってしまいますが、紙のプリ���タを使うためには、パソコンとWordやExcelがあって意味があるけですが(最近ですとスマホとスマホアプリも)、3Dプリンタ使用の大前提が、3Dデータを作ることができる、ということです。自ら3Dデータを���ることができず外注していたら安く作ることができるどころか額にデータ作成のコストがかさむことにもなりかねません。なので、そのようなケースで筆者がよく申し上げるのが、まず初めに3Dデータを作れるようになってください、ということです。


それと同時に、自分は3Dプリンタで何をしたいのか、目的意識をはっきりさせること。何をどのようなレベルで作りたいのかが明確になっていることです。


それができれば、あとは試すことでしょうか。一昔前と違って、今は出力サービスがポピュラーになり、使用される機材も多用になってきました。機材の調査も重要ですが、まずは実際の部品を実際に出力してみる、ということがよいのではないでしょうか。なにしろ、3Dデータさえあれば、3Dプリンタで出力できる機会は今やまわりにたくさんあるのですから。

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水野 操
大手PLMベンダー、外資系コンサルティングファームにて自動車、総合家電メーカーの3D-CADやCAE、PLM導入に携わったほか、プロダクトマーケティングや新規事業開拓に従事。 2004年11月に有限会社ニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、代表取締役に就任。オリジナルブランドの製品を展開しているほか、マーケティングや3次元CADやデータ管理をはじめとするIT導入のコンサルティングを行っている。著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)他多数。また、専門誌やウェブメディアに連載多数。

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