3Dプリンタコラム

オープンイノベーションがもたらすものづくり革命 第1回

マーケティング視点のものづくり革命へ

2015年2月5日  執筆者:株式会社カブク 稲田 雅彦

低迷する日本のものづくりの競争力

ジャパン・アズ・ナンバーワン——— 高度経済成長を経て成熟の域に達しつつあった1980年代、日本のものづくりは紛れもなく世界をリードしていました。しかし今は、その競争力の低下が叫ばれて久しくなります。すでに肌感覚として課題や問題意識を感じていらっしゃる方も多いと思われますが、改めて次のデータをご紹介します。

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アメリカがリーマンショック以前の水準を超える急速なV字回復を遂げているのに対し、日本は未だに低迷を続けています。品質の良いものを低コストで提供するという企業努力もあると考えられますが、このままでは業界全体が疲弊してしまうのではないでしょうか。


こうした状況を打破するためには、原価低減のような製造現場レベルでの改善では限界があります。日本のものづくりも、新しい売上をつくるための仕組みを生み出すべき時がきています。

マーケティングの視点から見た、次に打つべき手とは?

心理学でよく用いられる「ジョハリの窓」という表があります。

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自分から見た自分、他者から見た自分のイメージをモデル化したもので、自己分析などに利用したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。この表を、マーケティングの視点から企業と顧客の関係に置き換えて考えると、次のようになります。

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企業が売るべきものを知っていて、顧客も買うべきものを知っている状態(A)ではマーケティングは必要ありません。顧客が買うべきものを知らない場合(B)は、プロモーションを行い自社の製品を知ってもらう必要があり、企業が売るべきものを知らない場合(C)はリサーチをかけて顧客のニーズを理解する必要があります。


しかし、多くの製品分野において市場が飽和状態にある今、A・B・Cはすでに各社さまざまな手を尽くしています。大きな変革を期待できるとすればDの「未知の窓」であり、この窓を開けることができれば、その先には新しい市場が広がっていると考えられます。


そのためには、企業がこれまでのようにクローズドな環境でものづくりに取り組むのではなく、顧客や外部の人材を含めたオープンなつながりの中で新しい価値を生み出していくことが必要です。

流通やソフトウェア産業の成功から得られるヒント

日本において、メーカーに取って代わり、ユニクロやセブンイレブンのような流通系の企業が躍進を続けているのはなぜでしょうか。それは、顧客とダイレクトなつながりを持つことで、常に先のニーズをキャッチアップし、圧倒的なスピード感をもって商品やサービスに反映させているからです。


ソーシャルゲームなどのインターネット系サービスにおいても、もはやこうしたビジネス感覚は当たり前になっており、自分たちがつくったソフトを自分たちで運営し、ユーザーの反応に合わせてアップデートしていくという作業を、毎日のように繰り返しています。


今、製造業においても、こうしたビジネスモデルへのシフトが求められており、そのカギとなる考え方のひとつが「オープンイノベーション」です。

オープンイノベーション型のものづくりへ

オープンイノベーションとは、ハーバードビジネススクールのヘンリー・チェスブロー博士によって提唱された概念です。これまで、多くのメーカーは自社で開発を行い、そのノウハウを機密情報扱いするクローズドイノベーションの手法をとってきました。


これに対して、ソフトウェア産業ではオープンアーキテクチャ、オープンソースなどの仕組みが生まれ、急激にイノベーションが進むことで、業界全体に大きな利益をもたらしました。ハードウェア産業(ものづくり)も、こうした仕組みを取り入れなければ変化に追いつけない時代になっています。


オープンイノベーションの世界では、インターネットを介して情報が共有・拡散され、圧倒的なスピードと多様性を生んでいきます。そこでは今、デジタルファブリケーション(デジタルデータをもとにした加工・成型技術)が発達し、これまでに無いプロダクトやビジネスメリットが生まれています。


私たちの会社カブクでも、3Dプリンタをオープンイノベーションの重要なインフラとして捉えており、3Dプリント技術を使ったデジタルものづくりを通して新たな価値を創造するために、現在さまざまなプロジェクトを進行しています。


次回のブログでは、オープンイノベーションから生まれた具体的な事例を通して、ものづくりの新たな可能性に触れていきたいと考えています。

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株式会社カブク 代表取締役 稲田 雅彦
東京大学大学院修了(コンピュータサイエンス)。大学院にて人工知能の研究に従事。修了後、博報堂入社。入社当初から、様々な業種の新規事業開発、統合コミュニケーション戦略立案、クリエイティブ企画開発、システム開発を行う。カンヌ、アドフェスト、ロンドン広告祭、TIAAなど、受賞歴多数。2013年株式会社カブクを設立。主な著書「3Dプリンター実用ガイド」など。3Dプリント技術を使った デジタルものづくりサービス「rinkak」を運営。

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